King Master Model Cornet

もはや“トラッド・ジャズ専用楽器”となってしまったロング・コルネット。

ジャズ草創期のアメリカでは“ラッパ”といえばロング・コルネットのことでしたが、現在は衰退し絶滅の危機にあります。

僕が現在使用しているロング・コルネットは

“キング社 マスターモデル・コルネット”

です。

シリアルナンバーは#277915、1946年製のヴィンテージモデル。

同型の銀ベル仕様“Silvertone”“Silversonic”の方が有名ですが、このモデルを使用したジャズマンにはNat Adderley、Wild Bill Davisonなどがいます。

ラッカーはほとんど剥がれ、メッキ&再ラップしたピストンも気密はスカスカ。バネの工夫と硬めのスライドグリスで抵抗感を確保している状態です。

まあ、手間がかかるのはヴィンテージ楽器ならではの楽しみだと考えています。

特異な点は、バルブを一周するチューニングスライド。この巻き方の楽器は今や見ることもないでしょう。進化途上の生物のような、グロテスクな魅力を放っています。

そのスライドには“マイクロ・チューニング・システム”という、ダイヤルを回して少しづつチューニング・スライドを動かせる仕掛けが付いています。

このダイヤルは、主管を目一杯伸ばしたときの抜け落ち防止ストッパーでもあり、これによりA管として使用出来るとのことです(1~3番スライドの替え管はなく、抜いて伸ばします)。

3番スライドはフックがありませんが、長めに作られているので自力でピッチ補正する前提なんでしょう。

チューニング・スライドの先、3番ピストンに入る直前の曲がり角には補強のためのパッチが当ててあります。こういうヴィンテージ楽器ならではの無骨さが僕は好きです。

ベルには巻き返しではなく、後付けの縁輪が溶接されています。分厚いベルで、仏壇の御鈴のようにチーン…と響きます。

ロング・コルネットは、コルネットとトランペットの合いの子みたいな楽器で、音色や表現力は最近の“モネ”などの楽器を彷彿とさせます。でもトランペットよりコンパクトで疲れにくく、ベルの位置的にも音質的にもモニターしやすいので、音を飛ばすことを諦めさえすれば圧倒的に扱いやすく、親しみやすい楽器だと思います。

もともと僕はコルネットの音色やニュアンスを求めてトランペットを吹いてきたところがあり、ロング・コルネットはうってつけの楽器でした。

ただ僕はあまり楽器の持ち替えが得意じゃないので、なかなかこの楽器を触れずにいます。世の中的に、もう一度ロング・コルネットが見直されて定番になったらいいのに、と思っています。

トランペット 菅野 淳史 のサイト

trad-jazz trumpeter Atsushi Kanno's website